ゼミ担当教員
一言コラム
ひとに教えたくなる
マーケティングのはなし
ひとに教えたくなるマーケティングのはなし(Vol.52)
2026年7月18日(担当教員 唐沢龍也)
映画『急に具合が悪くなる』を観て
『ドライブ・マイ・カー』でカンヌ映画祭4冠、日本アカデミー賞の最優秀作品賞アカデミー賞では国際長編映画賞を受賞した濱口竜介監督は、異文化コミュニケーションをテーマにした作品を発表し続けている。
特に演劇と言語が重要な仕掛けとしての役割を果たす特徴がある。今年のカンヌ国際映画祭で岡本 多緒(おかもと たお)さんと ヴィルジニー・エフィラさんの二人がカンヌ国際映画祭で最優秀女優賞を共同受賞したことでも話題になった。
42歳で癌のため逝去した哲学者の宮野真生子さん(福岡大学教授)と人類学者の磯野真穂さん(東京科学大学リベラルアーツ研究教育院教授)の往復書簡を書籍化したものが原作である。宮野さんの癌治療中のやり取りは、命をめぐる重いテーマであるにも関わらず軽妙に、そして深く進んでいく。癌になった人とそうでない人の異文化コミュニケーションのルポとも言える。
映画はこの原作の本質を残しながら、大胆に脚色され、舞台もフランスのパリ近郊のケアハウスに移されている。
濱口監督がある雑誌のインタビューで次のようにこの作品について語っている。
「出会い続ける、というのは、とてもいい言葉ですね。きっと、そうなのだと思います。人との関係って『この人はこういう人なんだな』という認識のうえでつくられていくもので、それはそれで衝突も少なくなるし、居心地はいいんだけれど、現実には自分が感じている『こういう人』ではない側面だってたくさんあるし、人の持つ役割というのは一つではない。家族でも恋人同士でも、出会い続けられる関係は理想でもあります。ただ、出会うことにはある種の動揺が含まれるので、いつもできることではない。それでも何年かに一回、出会い直せるような関係が、自分の人生にもあるといいなと思いますし、そういう瞬間を撮ろうという想いは、撮影中も抱いていたような気がします。」
(『ダ・ヴィンチ』ウエブサイト、インタビュー記事より抜粋)
出会い続けられる関係を意識するというのは大切なことだと思う。
ひとに教えたくなるマーケティングのはなし(Vol.51)
2026年6月5日(担当教員 唐沢龍也)
「ジャン・レノのひとり芝居『ラクダ』について想う」
フランスの名優ジャン・レノ(77歳)のひとり芝居『らくだ』を観た。自分の内面にいる動物、それはラクダだという。多くの国をゆっくり、一歩ずつ、思い荷物を背負って旅をするラクダと自らを重ねている。
ジャン・レノの人生が素晴らしい舞台美術と演出で綴られていく。歌も交えての熱演である。俳優の人生、その業の深さを見事に演じ切った。
モロッコのカサブランカで生まれ、フランスにて演劇を学ぶ。ドイツでの兵役の経験もある。カルトムービーとも言われる『Le Grand Blue』や『レオン』で世界的な俳優として有名になった。一気に仕事は増えるが、同時に家庭を犠牲にしてしまう生活の繰り返しだ。それは、2度の離婚という結末となり子供との別れを経験することになる。
彼が17歳の時に亡くなった母親への想いが泣かせる。成功した自分を見せたかっただろう。父親は自分のことをあまり語らなかった。自分の子供たちには、父親がどのような人生を歩んできたか知って欲しかった。その気持ちがこの芝居を彼に作らせた。
久々に芝居を見て感動のあまり涙が溢れ出た。
勿論、最後はスタンディングオーベーション。拍手が鳴り止まなかった。
作:ジャン・レノ
演出:ラディスラス・ショラー(フランス演劇界を牽引する演出家)
音楽:パブロ・ランティ(ピアノ演奏で舞台を支える)
「
ひとに教えたくなるマーケティングのはなし(Vol.50)
2026年4月27日(担当教員 唐沢龍也)
『Ankerというブランド』
Ankerというブランドをご存知だろうか。Anker(アンカー)は、中国の深圳(シンセン)で2011年に設立されたハードウェアメーカーである。Googleの元エンジニアが創業し、現在は世界100カ国以上で展開するグローバルブランドである。
Ankerグループは 「Empowering Smarter Lives」をミッションにしており、モバイルバッテリーが安全性に問題のある低価格商品と純正の高価格商品しかないという問題を解決すべく、手頃な価格の信頼できる製品を提供するという考えから生まれたという。
筆者も昨年、韓国にフィールドスタディに行く際、成田空港のショップでモバイルバッテリーを購入した。「Anker」の他に、オーディオイヤフォンのブランド「Sound core」やプロジェクターブランド「Nebula」などを展開している。ちなみに、イヤフォンもプロジェクターも品質は素晴らしく、ユーザーとして満足している。
これまで、COO(原産国)がブランド評価に影響すると言われ、研究もされてきた。Anker(アンカー)は中国発祥であるが、今や日本においても信頼性の高いテクノロジーブランドとして認知されている。その背景にはAmazonなどの高評価レビューや空港内などのリアルな店舗展開が功を奏しているといえよう。それは地道なブランドづくりに取り組んできた結果である。ブランドづくりに近道はなく、ユーザーへの価値提供を磨いていくしかないことがわかる。
ひとに教えたくなるマーケティングのはなし(Vol.49)
2026年4月11日(担当教員 唐沢龍也)
『熊の出没をマーケティング的に考える』
春になった。桜の花も散りはじめ、季節はこれから初夏に向かっていく。
2026年4月現在、冬眠から目覚めたクマの活動が活発化しており、日本各地で目撃・出没情報が相次いでいる。特に東北・北陸地方での出没密度が高く、住宅地付近での目撃も増えているため厳重な警戒が必要である。猟師の高齢化や減少による対策もなかなか追いついていない状況である。熊を仕留めるには10年以上の狩猟経験が必要とされる。
群馬や東京の奥多摩でも熊の目撃情報はニュースで報道されており、都市生活者にも他人事ではない。では、熊の出没が、どのような地域経済やビジネスにおいてマーケティング的な影響があるのか考えてみたい。
まず、第1に観光・レジャー需要の急減である。これは風評被害と実害の両方が考えられる。キャンプ場、登山道、温泉街などの予約キャンセルが相次ぎ、新規予約も入らなくなる。「大自然を満喫」といったポジティブな訴求が、「命の危険」という文脈に上書きされ、広告効果が著しく低下する。お祭りやスポーツイベントなどが開催できないという地方の活性化にブレーキをかける。
第2に自治体がマーケティングとして展開している「地方移住」の施策に大きな打撃を与える。
田舎に住むことが「危険」の同義語として捉えられる。これは長期的な「地域ブランドの毀損」であり、行政と企業が連携したリスクコミュニケーション(正しい情報の迅速な発信)が不可欠である。
もはや自然との共生がある臨界点を超えた状況では、抜本的な対応も否定できない。そのためには国は法的な整備、現実的な対応策を用意すべきである。
(写真は向かって左が蝦夷鹿、右はヒグマのジビエ料理である。ちなみにヒグマのお肉は100g2500円程度で取引され、高級牛肉並みに美味である)。
ひとに教えたくなるマーケティングのはなし(Vol.48)
2026年4月1日(担当教員 唐沢龍也)
『韓国香水ブランドTAMBURINSの代官山進出』
昨年、ソウルの聖水(ソンス)でも訪問した韓国の香水ブランドが先週オープンした「TAMBURINS」の代官山店。入店するのに驚きの大行列である。
日本の香水市場はコロナ以降、急拡大中であるが「TAMBURINS」は凄い人気である。
日本はコロナ以降、空前の香水ブーム。Z世代が大きくこの市場の拡大を牽引していることは以前このコラムでも述べた(2025年7月10日『若者と香水』(Vol.35)、参照)。
店舗を巨大なアート作品で空間を埋め、BLACKPINKなどのK-Popアイドルのお気に入りとしてSNSで情報拡散という実に上手いブランド・コミュニケーション。
代官山店では8000円以上の購入で、チャームをプレゼント中。さらに、犬の風船を配って、来場者を歩く広告塔にしている。日本企業は韓国企業のブランディングに学ぶ時代になっていると思う。セレブリティとのコラボなど実にスマート。SNSでバズるツボを押さえている。
「TAMBURINS」の香水の香り自体は個人的には、普通(可もなく不可もなく・・・)かなと思う。
ちなみに「TAMBURINS」の親会社はおしゃれなアイウエア企業であるGentle Monster である。
ひとに教えたくなるマーケティングのはなし(Vol.47)
2026年3月7日(担当教員 唐沢龍也)
『WBCのNetflix独占中継を考える』
いよいよWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)が開幕した。前回の日本代表の劇的な優勝のドラマからファンを魅了するイベントになることは間違いない。しかし、今回、地上波テレビでこれを気軽に楽しむことはできなくなった。
2026年のWBCの日本国内における放映権料は、前回(2023年)の約30億円から5倍となる約150億円に高騰し、この高額な放映権料によりNetflixが全47試合の独占配信権を獲得し、地上波放送は行われない。わずか3年で5倍の放映権料の跳ね上がりである。日本のテレビ局が広告収入だけで回収するのは極めて困難な水準になった。
これは、日本のスポーツ中継における「地上波テレビからサブスクへの移行」という象徴的な出来事であるといえよう。
すでにボクシングのタイトルマッチなどでも地上波が放映できないという現象は見られたが、今後、とりわけZ世代のような若年層は、人気スポーツをサブスクで楽しむ時代が本格化すると思われる。
しかしながら、Netflixに野球中継をする技術的なノウハウがあるわけではないので、Netflixの下請けとして日本テレビなど野球中継の技術がある地上波テレビ局が下請けとして担当しているという。
広告のデジタルシフトは、2017年に米国でインターネット広告がテレビ広告費用を超えたところから始まり、2021年には日本でもインターネット広告(39.8%)がマス4媒体の合計(36.1%)を抜き去った(電通ウエブサイト「2021年の広告費」より)。その流れからすれば地上波TVが衰退することは予想されたことであり、番組やコンテンツ自体の「地上波テレビからサブスクへの移行」も必然であろう。
ただし、Netflixもコロナ収束後のインフレや物価高の影響で会員が激減することからは逃げられなかった。家計が苦しくなれば、最初にエンタメ費からカットされるのだ。結果、広告付の視聴プランを用意することで料金を抑えるようになった。
今回のWBCのライブ配信(生中継)ではスタンダードやプレミアムなどの上位プランであっても、イニング間などに広告が挿入される。
広告の出稿先が地上波テレビからNetflixやAmazon Primeへ。そして、これらの企業の多くは日本企業ではなく、アメリカの企業であるということだ。
ひとに教えたくなるマーケティングのはなし(Vol.46)
2026年1月24日
(担当教員 唐沢龍也)
『名優ふたりは盟友でもあった。』
2025年末のダウンジャケットのハイブランドのモンクレールの広告キャンペーンWarmer Togetherで共演した。モンクレールが創業以来掲げてきた「真のぬくもりは外側だけでなく内側から生まれる」ブランド哲学が広告のコンセプトそのものとなっている。友情、尊敬、つながり、信頼、ぬくもりという人生において大切なものが、この名優二人の表情から伝わってくる。
この二人の代表作といえば『ゴッドファーザー2』と『ヒート』であろう。二人はニューヨーカーであり、映画界のレジェンドである。これまでの人生が見事に昇華され、多くのことを語りかけてくる。
広告とは「良い伝達」である。商業的な情報を超えて、人生を豊かにするメッセージがそこにあることが理想だろう。
モンクレールのウエブサイトには、このキャンペーンのマニフェストが紹介されている。
「ぬくもりは内側から増していきます。いつも心の内側から生まれるものです。
ぬくもりは共に歩き、語り合う瞬間から生まれます。 椅子を引き寄せて言葉を交わす。
思いやりに満ちた会話。
ぬくもりとは天候以上に、これからも、どんな状況であっても共にいることにあります」
Warmer Together
ちなみにイタリア・ミラノに本社があるモンクレールグループは2024年、全世界75ヵ国で376の店舗を展開し、31億8百万ユーロ(約5500億円)の売り上げがある。
ひとに教えたくなるマーケティングのはなし(Vol.45)
2026年1月11日
(担当教員 唐沢龍也)
『三島由紀夫生誕100年にあたって』
三島由紀夫生誕100年ということで、紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYAにて上演中の
『サド侯爵夫人』を観劇した。三島由紀夫が自衛隊の市ヶ谷駐屯地で自決する5年前の作品である。
「サディズム」の語源にもなったサド侯爵を待ち続ける貞淑な妻、サド侯爵夫人ルネ他5人の
登場人物たちを中心に展開される会話劇である。女性の役をすべて男性俳優が演じるという趣向である。
チケットは完売、満員御礼。
女性の観客が多かった。
作 三島由紀夫
■演出 宮本亞門
■出演
成宮寛貴 東出昌大 三浦涼介
大鶴佐助 首藤康之 加藤雅也
サド侯爵夫人ルネを演じる成宮寛貴やサン・フォン伯爵夫人を演じる東出昌大は 世間を騒がせた個人的なスキャンダルもあった俳優たちではあるが、ふたりとも素晴らしい 演技が光っていた。
この戯曲のテーマはさまざまな解釈ができよう。
善と悪、清と濁の境界の曖昧さ、人間の愛情、憎悪の不確かさ。
最後、待ち望んでいたサド侯爵が自らの元に訪ねてきたら、もう会うことはないと別離を告げる。 人間というものの不可解さであり、謎である。
手の届かない、家を空けっぱなしにするサド侯爵をルネは超人間として愛する対象として認めていたのだろう。
三島由紀夫の戯曲、男性4人のみの『わが友ヒットラー』と対をなす作品であり、こちらを女優4人で上演する 企画も観てみたいものだ。
ひとに教えたくなるマーケティングのはなし(Vol.44)
2025年12月27日
(担当教員 唐沢龍也)
『AI時代―広告も人間性に回帰しはじめた?』
12月6日、7日に日本広告学会の全国大会が東京自由が丘の産業能率大学で開催された。毎年、1回は学会で研究報告をしなくてはと決めており参加した。大会統一論題は「広告コンクールに学ぶ広告のあるべき姿」であった。大会要旨には「広告コンクールが、優れた広告作品を選び称えるだけでなく、それを広く世に知らしめることを目的としているからです。つまり、そこで顕彰される作品は、単なる広告主のコミュニケーションの道具ではなく、その受け手や社会にとっても価値あるものでなければならないはずです」とある。
博報堂ケトル ファウンダーである木村健太郎さんの基調講演はカンヌ クリエイティブ フェスティバルの審査員としての経験やこれまでのテーマ・キーワードを紹介しながら広告の現在地を示す内容だった。
2025年のテーマは物語(Storytelling)であった。ブランドの深い背景や、社会課題と向き合う人間の物語に焦点を当てた作品が評価された。
ロレアルの「Because I'm Worth It」
プロジェクトがグランプリを受賞した。The Grand Prix-winning The Final Copy of Ilon Specht, for L'Orealはロレアルの有名な「私にはその価値があるから」のコピーを書いた女性コピーライターの物語である。2024年のテーマが生成AIと広告:Creative Effectiveness, AI & Human Creativity, The Business of Creativityであったことを考えると大きな変化である。
もう一つのキーワードはHuman Craft(人間の技術・技巧、手作業による創造活動)であった。生成AIがサクッと作ったものではなく、人間の手によって、職人技のように丁寧に作られたものの価値を見直す動きだ。Human Craftは日本人がもう一度、世界で活躍できる可能性を感じさせる言葉ではないだろうか。
ひとに教えたくなるマーケティングのはなし(Vol.43)
2025年12月3日
(担当教員 唐沢龍也)
『競争優位とは何か?星野リゾートのマーケティング戦略』
星野リゾート社長星野佳路さんの講演を聞く機会を得た。31歳で経営者となったとき、教科書通りの経営をやってみたという。その教科書が有名なマイケル・E・ポーターの『競争優位の戦略』であった。
老舗大手ホテル・外資系ブランドホテル・都市型ビジネスホテル・旅館と競合だらけのホテル業界。1990年代からコモディティ化するホテル業界でいかに『独自の姿』を創り出すか?!
それはポーターのセオリーでは3つのステップからなる。第1ステップは生産性のフロンティアを達成する。これは、業界で必ずやらなければならないサービスの内容・質を高めることであり、スタートラインに立つことである。第2にトレード・オフを伴う独自の活動を選択する。これは競合が真似しようとすると犠牲を伴う活動を意味する。第3ステップに活動間にフィット感を生み出すが重要である。
脱コモディティ戦略(通称:ダツコモ山)はこの3つのステップで実現される。トレードオフを伴わない活動は真似されて、模倣される。業績は単にコストが安い方に流れる。星野リゾートのトレードオフは①運営特化、②サービスチーム、③ブランディング、④日本旅館メソッド、⑤フラットな組織文化からなる。これらが組み合わさった一連の活動となった時に競合は模倣困難(模倣すると莫大なコストが発生する)となり、そこで競争優位が生まれる。
運営に特化することは、所有者としての利益を失い、なかなか運営特化にいけないのが現実である。フラットな組織も経営幹部の特権を失うことはなかなかできないため模倣しにくいという。星野社長は社長室も専用車も持たないユニークな経営者だ。
マイケル・E・ポーターの『競争の戦略』・『競争優位の戦略』を改めて読み直している。
ひとに教えたくなるマーケティングのはなし(Vol.42)
2025年11月16日
(担当教員 唐沢龍也)
『ヨーコ&ジョンの伝説的なトークショー』
ジョン・レノンとオノ・ヨーコが1972年に5日間にわたって司会を務めたアメリカのトーク番組のドキュメンタリー「Daytime Revolution」がNHK E テレで放映された。当時、ベトナム戦争中のニクソン政権下。
ふたりが選んだゲスト達が登場する。その中には過激な黒人解放闘争を展開していたブラック・パンサー党創設者のひとり、ボビー・シールもゲストで出演した。この番組が放送された数週間後、アメリカ政府はジョンに国外退去命令を下した。放送禁止になっていた“Imagine”をスタジオで披露する。その歌詞は今も心に染み渡る。マーケティングなんてものは平和でなければそもそも成り立たないのだ。
(写真はNHK ONE ウエブサイトより)
Imagine there's no heaven
It's easy if you try
No hell below us
Above us only sky
Imagine all the people living for today
You
You may say I'm a dreamer
But I'm not the only one
I hope someday you'll join us
And the world will be as one
Imagine there's no countries
It isn't hard to do
Nothing to kill or die for
And no religion too
Imagine all the people living life in peace
You
You may say I'm a dreamer
But I'm not the only one
I hope someday you'll join us
And the world will be as one
Imagine no possessions
I wonder if you can
No need for greed or hunger
A brotherhood of man
Imagine all the people sharing all the world
You
You may say I'm a dreamer
But I'm not the one
I hope someday you'll join us
And the world will live as on
ひとに教えたくなるマーケティングのはなし(Vol.41)
2025年11月5日
(担当教員 唐沢龍也)
『関内キャンパスfes.2025での講演・韓国の今を語る』
学園祭シーズンである。11月3日は関内キャンパスでの学園祭イベントで経営学部の企画として9月にゼミナールの学生と訪問した韓国をテーマに講演をさせていただく機会を得た。Kカルチャーの成功の背景という2つの視点から韓国の現在を考えてみるという企画である。
Kカルチャーの成功の背景には、韓国政府は国家戦略(文化産業振興政策・Kコンテンツ支援)として、1990年代末から「文化を輸出産業化」してきたことが挙げられる。
文化産業輸出額:2010年約30億ドから2023年約130億ドルに成長していることからも明らかである。そして、BTS・BLACKPINK・NewJeans・『イカゲーム』や『梨泰院クラス』の世界的ヒットに代表されるK-popや韓ドラが先鋒として海外市場へ浸透し、コスメ、カフェ文化などが受け入れられ、支持されるという展開は日本のクールジャパンと異なる点であろう。単なるコンテンツではなく韓国の文化をブランド化することに成功している。
また、韓ドラの成功要因(日本との違い)はCJグループが運営するケーブルTV(tvN・Mnet・OCNなど)総合編成チャンネルの登場し、優秀なスタッフ(制作者)が地上波テレビ局(KBS・MBC・SBS)から総合編成チャネルへ移籍したことも影響している。結果、ドラマコンテンツの多作・競争激化時代になり、スタジオシステム:制作会社が企画・制作したドラマをテレビ局に販売するシステムが確立されたことが大きいと考えられる。
JTBCのヒットドラマ『梨泰院クラス』・『SKYキャッスル 上流社会の妻たち』・『夫婦の世界』などはそのような厳しい競争環境から生まれたのである。
韓国コスメやK-Fashionの勢いはもはやグローバルに広がっている。一方の日本企業(資生堂)は韓国市場で1984年には10%あった市場シェアが2024年には0.6%に激減している。この40年間の間に市場シェアの94%を失った。これは、ほぼ完全な顧客離れや競合他社への移行を意味する。
このようなところにも、日韓のグローバル戦略の違いが明らかになっている。
ひとに教えたくなるマーケティングのはなし(Vol.40)
2025年9月21日
(担当教員 唐沢龍也)
『海外フィールドスタディ:ファションEC MUSINSA訪問』
MUSINSAはオンラインファッションコマース企業である。社名は「ものすごく靴の写真が多いところ」という意味の「무지하게 신발 사진이 많은 곳(ムジハゲシンバルサジ二マヌンゴッ)」の頭文字を取ったものである。2001年に開設された、靴とファッションが好きな人たちが集まったオンラインコミュニティを起源とする。本社は聖水(ソンス)という韓国ソウルのファッションの中心になったエリアにある。
ムシンサ(MUSINSA)は、韓国発のファッションECサイトであり、ファッションブランドのキュレーション、メディア発信、オフラインイベント開催など、幅広く事業を展開する企業として急成長中。「MUSINSA STORE」というオンラインストアで、7,000以上のファッションブランドを扱っている。また、「MUSINSA MAGAZINE」というメディアで、韓国のファッションやカルチャーに関する記事を配信する。オフライン展開では「MUSINSA TERRACE」という複合スペースや、ポップアップストアなどを展開し、ブランドと顧客の接点を拡大している。
日本を含むアジアや米国など、13の国と地域に「MUSINSA GLOBAL STORE」を展開し、韓国ブランドの海外進出を支援している。「MUSINSA STANDARD」というモダンでベーシックなカジュアルウェアを提案する自社ブランドも展開中。韓国国内の会員数は約1000万人で、月間アクティブユーザー数も400万人を超える。
ムシンサは、韓国のファッションシーンを牽引する存在として、オンラインとオフラインの両面で事業を展開し、韓国ファッションを世界に発信する役割を担っている。MUSINSA BEAUTY という化粧品ブランドも立ち上げている。
MUSINSAはZOZOとLOFTがかなり洗練されて融合しているイメージだろうか。
ひとに教えたくなるマーケティングのはなし(Vol.39)
2025年9月21日
(担当教員 唐沢龍也)
『海外フィールドスタディ:K-Beautyのパワー』
ゼミ3年生17名と企業訪問。初めての韓国である。今までなぜ、来なかったのか不思議ではある。韓国は美容大国である。それも先進的な美容医療と化粧品で日本の若い世代にも
支持されている。また、急激に伸びた市場では、同時にさまざまなトラブルも起こっている。
訪問したオーガニック化粧品PINKWONDERはそのような状況の中で成長している。もともと、自身がひどいアトピーで苦しんだ経験から創業したCEOのOliviaさんのお話を聞くことができた。フランスのパリ有名百貨店であるボンマルシェにも進出し、日本にも展開している。
コンセプトがシンプルでわかりやすく、ブレがないブランドである。安定供給されるイスラエル産のホホバオイルの自然派化粧品は美容医療の先進国の韓国での逆張り戦略と言えるだろう。
K-popや韓国ドラマのグローバル人気に合わせて韓国コスメのパワーはすごい。街中にあるOlive Young(通称オリヤン)は日本人と中国人の若い女性で賑わっている。韓国政府が化粧品を重要な産業として後押ししていることも影響があるのだろう。
一方の韓国の女性たちは日本の化粧品ブランドの品質を高く評価しているということもわかった。
ひとに教えたくなるマーケティングのはなし(Vol.38)
2025年8月8日
(担当教員 唐沢龍也)
『横浜とシルクの関係』
横浜は開港以来、日本の生糸貿易の中心地として発展した。全国から集められた生糸や絹織物が横浜港から欧米へ輸出され、日本の近代化を支える主要な輸出品となる。特に、明治時代には輸出の約7割をシルクが占め、横浜の貿易港としての繁栄を築き上げた。その歴史を伝える「シルク博物館」に初めて行ってきた。入場料は500円。生きた蚕(かいこ)が桑の葉を食べていたり、絹糸をお湯で煮た繭玉から紡ぐ展示があったりとなかなか興味深い。
日本の養蚕農家は、蚕の品種改良を積極的に行い、病気に強く、一本の繭からより長く、均一な太さの糸が取れるようになった。この品種改良によって生み出された高品質な繭が、日本の生糸の評価を高めた。つまり、『カイゼン』がなされていたのである。
また、国の定めた厳格な検査基準に基づいて品質が管理されていた。これにより、海外の取引先は安心して日本の生糸を購入することができた。徹底した品質管理が、日本の生糸に対する信頼性を高め、国際市場での競争力を強めた。
Made in Japanの価値は昔から変わらないのだなあと再認識させられた。
3階の古代から現代までの衣裳風俗の展示は見応えありなのだが、マネキンがリアルすぎてちょっと怖い。
ひとに教えたくなるマーケティングのはなし(Vol.37)
2025年7月27日
(担当教員 唐沢龍也)
『バングラディシュからの
客人に学ぶ』
7月14日から20日、Palli Karma-Sahayak Foundation (PKSF)という政府が設立した非営利団体および政府関係者14名が、中小企業の成長戦略および支援を学びに来日した。ユニクロなどとも関係の深いバングラデシュにおける中小企業の持続的な成長と、中規模・大規模企業への発展を支援する知見を得ることを目的としている。
現在、バングラディシュは政情が不安定で、貧困層向けの少額融資(マイクロクレジット)を専門に行グラミン銀行により社会変革を実現したムハマド・ユヌス博士が暫定政府の首席顧問を務めている。貧困層の自立支援に貢献した功績が評価され、2006年にムハマド・ユヌス博士がノーベル平和賞を受賞した。
今回、国際文化学部の柏崎先生とご縁があって、プログラム初日のKeynote Lectureを担当した。タイトルは「日本企業におけるイノベーションとアントレプルナーシップ」である。唐沢ゼミの3年生も全員参加した。
バングラディシュは日本の技能実習制度の対象国でもある。訪問した神奈川トヨタ自動車では代表団とバングラディシュからの技能実習生の日本語教育の場で交流することができた。
このように海外に学ぶこと、学習回路をオープンにし、異なる文化の人たちと交流することがいかに大切かを改めて認識させられた。
かつて日本も企業研修という名目でアメリカやヨーロッパ、東南アジアへ出掛けていたが、近年、激減しているという。昨年、訪れたシリコンバレーでも以前のように日本人を見なくなったと言われた。これでは、狭視野になり外国人に対して、偏見を持ちやすくなるだろう。いつかバングラディシュを訪問してみたい。
ひとに教えたくなるマーケティングのはなし(Vol.36)
2025年7月10日
(担当教員 唐沢龍也)
『若者と香水』
普通の20代の配送関係の仕事をしている男性の話である。
香水が好きだという。なぜ、香水に関心を持ったかというと、ある同業の友人の影響によるのだと言う。
渋谷のクラブに一緒に行った時に、その友人が教えてくれたのが、洋服より女の子の印象に残るのは「香り」だから香水に気を使うべきだと。なぜなら嗅覚はダイレクトに脳で感じるものであるという説だ。なるほど、理にかなっている。
そのうち、価格の高い香水であるLouis VuittonやJo Malone Londonなどを集めるようになったと言う。最も利用する情報源はTikTokで、信頼できるインフルエンサーのフォローをしている。情報はそこから得ており、専門家も顔負けである。もちろん、テレビは見ないし、雑誌は読まない。
彼の一番のおすすめはZARA のフレグランスなのだそうだ。特に、Jo Lovesの創設者、Jo Malone CBEによる作品が良いとのこと。なぜなら、Jo Maloneが調香を担当しており、香りが素晴らしい。ネーミングもELEGANTLY TOKYO・FASHIONABLY LONDON・ENERGETICALLY NEW YORKなどナラティブ(物語性)である。
皮肉な話だが、本家のJo Malone LondonはエスティーローダーグループにM&Aをされており、本人は調香師としてもはや関わっていないのだそうだ。
日本の香水市場は拡大しており、今までと違う現象が起こっている。Z世代の購入はこのようにTikTokで情報を収集し、しっかりと考えて消費をしている。
企業のマーケッターは、若い世代にアプローチする場合、TikTokをいかに活用するかを真剣に考えた方が良いと実感した次第である。
ひとに教えたくなるマーケティングのはなし(Vol.35)
2025年6月16日
(担当教員 唐沢龍也)
『栃木のイチゴと令和の米騒動』
マーケティングにおいて流通は極めて重要な役割を担っている。昨今の米の流通の問題は複雑な仕組みにあることは間違いない。
以前、イチゴの生産量全国一位の栃木県に聞き取り調査で行った時に、栽培する温室ハウスのある所は以前、水田だったと聞いた。水田は平坦な土地でイチゴのハウス栽培に最適であったため、米づくりをやめてイチゴ農家になったのである。つまりそれ以前は、栃木県は全国有数の米の産地であったのだ。
これは、1971年からから2017年まで約50年続いた減反政策であり、水田面積や米の生産量が着実に縮小した。現在も「適正生産量」の提示や他作物への転作補助が継続されており、実質的な減反が続いている。主食である米の供給力が構造的に低下したまま放置されてきたと言える。
そのような状況の中、米の需要が増加した。背景には、いくつかの要因があると考えられる。まず。訪日外国人観光客の増加による日本食の消費拡大、ひいては米の消費が増加したことが挙げられる。また、ウクライナ戦争以降、小麦の価格が高騰し、パンや麺類の価格に比べて米に割安感が生まれたことが考えられる。さらに、農協(JA)経由の流通だけでなく、直接取引が増加したことで、異なる流通経路間での米の奪い合いが発生したことも一因であろう。米の価格高騰を見越した業者による買い占めや売り惜しみといった投機的な行動が価格上昇に拍車をかけたのだ。
政府による備蓄米放出はこのような根本的、構造的な問題の解決にはならない。政府が対処療法で介入した結果、何かがよくなることはないだろう。
本当に必要なことは、農業・漁業・林業という第1次産業とサービス業などの第3次産業を結びつけて、食料自給率の問題も含めて対応できる農業国化へのグランド・デザインが必要だ。
写真は国会で販売されているお土産である。これが本当に美味しいカレー煎餅で、国産米100%使用。ネーミングも秀逸。
ひとに教えたくなるマーケティングのはなし(Vol.34)
2025年5月4日
(担当教員 唐沢龍也)
『Captured or Missed?-シャッターに奪われた時間』
ハースト婦人画報社から雑誌『Esquire(エスクワイヤー)』が復活し、年4回発行されることになった。以前、定期購読していたこともあり、懐かしい友に再会する気持ちである。第2号で、印象に残った記事は「Captured or Missed?-シャッターに奪われた時間」(by Martin Parr)であった。Martin Parrは文化人類学的な視点からオーバーツーリーズムをテーマにした写真を撮り続けている。
「観光スポットで写真を撮るのは、自分の存在を証明するためです。でも、圧倒的な数の人たちが同じことをしています」
「心踊る出来事、美しいもの、珍しいものに出会えば、リアルな体験を味わう暇もなく、写真を撮って一刻も早くSNSに載せることに、わたしたちはとらわれている」
まさに、ゴールデンウィークは観光客が街に、観光地に溢れている。そして、誰もがスマホを何かにかざしてシャッター音(日本人のみだが)が聞こえてくる。
わたしたちは、風景に見惚れたり、美術品をじっくり鑑賞したり、美味しい食事を味わうことよりも、スマホで写真を撮り、インスタにアップすることに意識の優先レーンが出来上がってしまっている。スマホのカメラ技術の進化に伴って、その傾向は加速していったと言える。
少し、シャッターに奪われる時間を意識してみると、物事の大事な本質が見えてくるかもしれない。それは、自分の存在を証明するつもりが、その逆の没個性化に陥っていることに気がつくことでもある。 (写真:阪急梅田駅中央改札、 筆者撮影)
ひとに教えたくなるマーケティングのはなし(Vol.33)
2025年4月13日
(担当教員 唐沢龍也)
『トランプ大統領のカオス』
2016年11月4日に雑誌 The New Yokerに掲載された風刺漫画である。「心肺停止になったとして、ドナルド・トランプが大統領だったら、蘇生処置をして欲しい?」そのくらい嫌な人がいる というコトなのだろう・・・
2025年1月から2期目の大統領就任後の矢継ぎ早に大混乱を引き起こしている。これに、イーロン・マスクの暴力的なスピードが加わっており、世界は不安定なVUCA時代そのものになっている。変化に伴うコストも致し方ないと考える有権者も流石にダメージではないだろうか。イスラエルとガザの戦闘もウクライナ戦争も止まっていない。
さて、どうなるのか・・・アメリカがこれからも世界に大きな影響を与えることは間違いない。
マーケティングは『平和』であることが大前提なのだと実感する。
ひとに教えたくなるマーケティングのはなし(Vol.32)
2025年4月9日
(担当教員 唐沢龍也)
『松家仁之:知性と感性を繋ぐ編集者・作家としてのブランド戦略』
松家仁之氏は、新潮社において長年にわたり編集者として活躍し、数々の話題作を手がけてきた功績を持つ。早稲田大学第一文学部卒業後、1982年に新潮社に入社。『小説新潮』『SINRA』編集部を経て出版部に所属。1998年には翻訳書シリーズ「新潮クレスト・ブックス」を創刊し、海外文学の新たな潮流を日本に紹介した。
彼の最大の功績と言えるのが、2002年に創刊した季刊誌『考える人』である。編集長として、社会、文化、芸術、科学など幅広いテーマを扱い、著名な知識人や文化人のインタビュー、エッセイ、対談などを掲載。読者に深く考えるきっかけを提供し、知的探求心を持つ層からの厚い支持を得ている。単なる情報誌ではない、読者の内面に深く響くメディアとしてのブランドを確立した。
作家としての松家氏もまた、独自の視点と繊細な筆致で読者を魅了する。特に『火山のふもとで』 (2012)は、北軽井沢を舞台に、若い建築家の視点を通して夏の家の自然と人々の交流を描き出し、読者からは「てらいのない美しい文章」「心に沁みわたる奥深い表現」と高く評価されている。
マーケティング的な観点から見ると、松家仁之氏は「知的好奇心」「上質なライフスタイル」「感性豊かな読書体験」をキーワードとするターゲット層に響くブランドを確立していると言える。読者の知的好奇心を満たし、感性を磨き、より豊かな人生を送るためのツールとして位置づけられるだろう。
今後も、編集者・作家としての活動を通じて、多くの読者に新たな発見と感動を提供していくことが期待される。彼の作品は、時代を超えて読者の心に深く刻まれる可能性を秘めている。
ひとに教えたくなるマーケティングのはなし(Vol.31)
2025年3月29日
(担当教員 唐沢龍也)
『大阪・関西万博、開催迫る』
2025年4月13日から10月13日まで大阪夢洲(ゆめしま)で『ぜんぶのいのちと、ワクワクする未来へ。』をスローガンに開催される。
思い出されるのは1970年の大阪万博である。幼稚園児であったが両親に何回も連れて行ってもらった。アメリカ館の「月の石」の展示やソビエト連邦館の宇宙船の展示は6時間、8時間という長時間の行列の末に一瞬見えたという経験ではあったが今も覚えている。お土産にねだって買ってもらった岡本太郎の『太陽の塔』の貯金箱は長らく机の上に飾ってあった。まさに高度成長期の祝祭としての国家イベントであり、大いに盛り上がっていたのだ。当時はインターネットもなく、海外旅行も特別なものであった時代、全てが物珍しく、新鮮な価値に溢れていた。
2025年の大阪・関西万博は開幕までに着工が間に合わないとか、メタンガスが発生して工事現場が爆発したとか、チケットが全く売れていないとか、2億円もトイレに費用をかけたとかネガティブなニュースには事欠かない。おそらく会期中もさまざまな問題が起こるだろう。
シリコンバレーの大物、PayPal創業者のピーター・ティールの著書に『Zero to One』がある。ビジネスはゼロから立ち上げることに意味があり、それが独占を生むことができるという考えである。One to N、つまり、すでに出来上がったものを進化させる、コピーするということではダメなのだという。
マーケティングは新しい価値の創造、価値の提供が起点となる。大阪・関西万博自体がOne to Nの古い発想である。ただし、その何処かにZero to Oneの展示や参加企業があれば行く価値があると思う。
今年の夏も大阪は猛暑であろう、その真っ只中に訪れてみようと考えている。
ひとに教えたくなるマーケティングのはなし(Vol.30)
2025年3月2日
(担当教員 唐沢龍也)
『引き算のマーケティング:シグマ、世界初の継ぎ目なしミラーレス「Sigma BF」』
2025年2月27日に横浜で開幕したカメラ技術の展示会「CP+」で大きな話題になっていたのが、世界初の継ぎ目なしミラーレス「Sigma BF」である。
川崎市のレンズメーカー、シグマが発表したミラーレスカメラ「Sigma BF」は、カメラ業界に新たな風を吹き込む革新的な製品といわれる。「Sigma BF」の真髄は、そのシンプルさにある。
持ち手の部分など、従来のカメラに存在した継ぎ目を一切排除した、滑らかで美しいボディデザインは、単に見た目の美しさだけを追求したものではない。継ぎ目をなくすことで、カメラ全体の剛性が高まり、耐久性が向上する。また、継ぎ目に埃や水滴が入り込むリスクも軽減され、過酷な環境下でも安心して撮影に集中できるのだ。
シグマは、レンズメーカーである。ユーザーはカメラマンや映像製作者などのプロフェッショナルも多い。単なる高性能カメラではなく、極限まで削ぎ落としたデザイン性という新たな価値を前面に押し出すことで、消費者の心を刺激している。
SNSへの写真や動画投稿の需要は高まる傾向は続いており、『日本経済新聞』によるとカメラ映像機器工業会(CIPA)は2025年のデジタルカメラの世界出荷台数を前年比1%増の858万台と予測している。
引き算のマーケティングは極めて難しい。革新性を突き詰め、不要な要素を削ぎ落としながら、高いパフォーマンスを引き出す性能を凝縮しなくてはならないからだ。
「Sigma BF」のボディは、タイムレスな価値を見据えて設計されているという。7時間をかけてアルミニウムインゴットから削り出された、カメラ史上初となる継ぎ目のない真のユニボディ構造が快適な操作感やホールド感を生み出す。スマートフォンでの撮影に満足できない、より本格的な写真撮影に挑戦したいという若い世代や、デザイン性の高いカメラを求めるファッション感度の高い層など、幅広いユーザーに支持される可能性を秘めている。
正直・・・これは欲しいなと思ってしまった。
ひとに教えたくなるマーケティングのはなし(Vol.29)
2025年2月12日
(担当教員 唐沢龍也)
『坂本龍一 | 音を視る 時を聴く seeing sound, hearing time』@東京都現代美術館
行きたいなあと気になりながら、なかなか腰が重たかった。その理由のひとつには、2024年4月7日にオンエアされたNHKスペシャル『The Last days 最期の日々』において癌の闘病生活の中で、音楽、自然にすさまじく向き合う「教授」の姿がずっと胸の中にあったことがある。2023年3月28日、71歳で逝去されるまでの生き様はあまりに衝撃的であった。
展覧会のコンセプトは「音を空間に設置する」という挑戦と、「時間とは何か」という問いを根底に、坂本龍一氏の音楽を五感で体験できる構成となっている。晩年、雨をはじめとする自然の中にある音を収集していた活動とつながるインスタレーションが印象的だった。
展示No.3の2011年の東日本大震災の津波で被災した宮城県農業高等学校のピアノを「自然によって調律されたピアノ」と捉え作品化した《IS YOUR TIME》 (2017/2024)は人間と自然、その関係をピアノの音で表現している。
展示No.8の坂本龍一+高谷史郎《LIFE–fluid, invisible, inaudible…》は、霧の発生する9つの水槽に投影される映像と音によるインスタレーション作品である。森の木漏れ日の中を散策しているような感覚になる。
NHK Eテレの『日曜美術館』で特集したこともあってか、当日チケットは70分待ち、予約しているチケット購入者も入場まで60分待ちの大盛況であった。
坂本龍一の作品と思想に触れることができる貴重な機会であった。
ひとに教えたくなるマーケティングのはなし(Vol.28)
2025年2月6日
(担当教員 唐沢龍也)
「国家とは何だろうか-
吉本隆明『共同幻想論』について」
アメリカのトランプ大統領がイスラエルのネタニヤフ首相とワシントンで会談し、「ガザをアメリカが所有する」とパレスチナの人々にガザを捨て、他国に移住するように発言した。アラブ諸国、欧州(イギリス、フランス)はこの発言は民族浄化策、国際法に違反していると批判している。トランプ政権になることによって様々な混乱が起こることは予想されていた。そのほかにカナダ、メキシコ、中国をはじめとする海外に対して大幅な関税の引き上げ、移民の強制的な送還、出生地主義(アメリカで出生した場合、アメリカの市民権を与える)の撤回など大統領令を連発している。
そこで、国家とは一体、何だろうか?という問いになる。
1968年に出版された吉本隆明の『共同幻想論』がある。
大学生時代に購入し、ずっと手元にあった一冊である。出版当時は、学生運動が盛ん行われ、翌年には東大安田講堂事件で機動隊と学生が衝突した時代であった。
大学生の時にはその難解な内容を完全には理解できなかったというのが正直なところだ。
今、読み直すと、多くの示唆を与えてくれる不滅の名著だということが理解できる。
吉本は「国家とは幻想の共同体だというかんがえを、わたしははじめにマルクスから知った」と述べている。つまり、社会生活上に聳え立つ西欧型の国家イメージと日本・アジア型の地縁血縁を基盤とする共同体に重なる国家イメージとは異なるということだ。吉本は『古事記』や『遠野物語』などの古典を遡り、すべての共同体は「幻想」で作られているとした。個人は簡単に共同体の中に溶け込む傾向があり、「個人の幻想」と「共同幻想」とは緊張関係がなくてはならない。
「関係の絶対性」という言葉も重い。戦争に国民全体がのめり込むような状況では、戦争に反対する人間は厳しく非難される。人間関係が個人の自由な思考を停止させようとする。同調圧力が強い体制の中では、間違った方針にしっかりと意義を唱えること、その姿勢を維持することがとても重要になる。
ひとに教えたくなるマーケティングのはなし(Vol.27)
2025年1月19日
(担当教員 唐沢龍也)
『多様性を捨てるシリコンバレーIT企業―トランプ政権前夜』
1月11日の『日本経済新聞』に「メタ、多様性施策を廃止―テック大手も『トランプ色』」という記事が掲載された。DEI(Diversity, Equity & Inclusion)が企業でも経営課題として注目されてきたが、米国の保守派による批判に迎合したことになる。
シリコンバレーは、世界最先端の技術と革新の中心地として知られている。しかし、その輝かしい成功の裏には多様性の重視があったはずである。異なる背景、文化、視点を持つ人々が交流し、革新的なアイデアが生まれる土壌が多くのイノベーションを実現してきたことは間違いない。人種、性別、性的指向、障がいの境界を超えていく理想があったはずである。しかしながら、最近のGoogle、Facebook、Appleなどの大手IT企業が公開している従業員データを見ると、管理職や技術職は白人男性が圧倒的に多く、女性、黒人、ヒスパニックなどの割合は非常に低いことも問題視されている。2023年には最高裁判所は大学入試で人種少数派を優遇するアファマーティブ・アクションは違憲であるという判断を下した。シリコンバレーIT企業が多様性を捨てるのはこのような社会の潮流の中にある。
多様性は、社会の持続可能性と発展に不可欠な要素である。シリコンバレーが再び革新の中心地として輝き続けるためには、多様性を取り戻し、すべての人が活躍できる環境を構築することを目指すべきであろう。
ひとに教えたくなるマーケティングのはなし(Vol.26)
2024年12月31日
(担当教員 唐沢龍也)
『チ。-地球の運動について』と『ブラックスワンの経営学』
2024年、激動の一年が幕を閉じようとしている。経営学の視点から日々、学生たちと未来について語り合い、社会の変化を目の当たりにする中で、改めて「変化」の重要性を実感した一年であった。
「変化こそが唯一不変のもの」。
この言葉は、激動の時代を生き抜く上で、私にとっての羅針盤となっている。社会を取り巻く環境は目まぐるしく変化し、新たな技術やビジネスモデルが次々と生まれている。そのような状況下では、変化を恐れず、常に新しい価値を創造していくことが求められる。特に生成AIの進化は、私たちの働き方やコミュニケーションのあり方を大きく変えつつある。これらの変化は、同時に新たなビジネスチャンスを生み出す可能性を秘めている。
しかし、変化は必ずしも心地よいものとは限らない。変化を恐れ、現状維持に固執してしまうことは人間の常である。変化を避けるだけでは、未来を切り拓くことはできないと認識して、積極的に新しいことに挑戦していく姿勢こそが重要である。
NHKで放映中のアニメ『チ。-地球の運動について』は15世紀のヨーロッパ某国を舞台に、宇宙に関する衝撃的な「ある仮説」である地動説をめぐる物語である。250万部の大ヒットコミックの原作者である魚豊は史実によると地動説へのキリスト教による苛烈な迫害は虚構であったとしながらも、フィクションとして命懸けで真理を探究し、弾圧された人々の姿を描いている。
『チ。』という題名の意味は、大地、血、知識のチの3つからなる。この作品から、学問をすることの意味を考えさせられる。つまり、真理を探求すること、常識を疑うことの大切さだ。3年生のゼミナールで早稲田大学の井上達彦先生の『ブラックスワンの経営学』を輪読しているが、学問では『ブラックスワン』を見つける研究がとても重要なのだ。
生成AI時代に突入し、私たちは、『チ。』(リアルな空間である大地、人間性である血、そして知識)とどう向き合うべきかの試行錯誤が続くだろう。基軸となるのは真理を探求する姿勢、常識を疑う意識であると思う。
ひとに教えたくなるマーケティングのはなし(Vol.25)
2024年12月24日
(担当教員 唐沢龍也)
2024年を振り返る(個人的雑感)
9月にゼミナールでアメリカのサンフランシスコとシリコンバレーを訪問した。サンフランシスコではWaymo(by Google)の自動運転無人タクシーにも乗車した。アメリカのIT企業がどのようにして革新的な技術やサービスを生み出し、それをビジネスの成長に繋げているのかの一端に触れることができたことは大きな収穫であった。
いまや日本とアメリカは一人当たりGDPでは2倍以上の差が開き、専門家の報酬はアメリカのほうが7.5倍も高い。野口悠紀雄さんの著書『アメリカはなぜ日本より豊かなのか』(2024,幻冬社)では「国民の能力に差がないのに、国の豊かさになると、なぜこれほどの違いが生じてしまうのか?」、「社会の仕組みの違いこそが重要なのである」と指摘されている。
その社会の仕組みの違いとは以下の6つに集約されるのではないだろうか。
⑴研究開発への積極的な投資
AI、クラウドコンピューティング、ビッグデータ、サイバーセキュリティなどの分野に重点的に投資される。
⑵人材の多様性と優秀な人材の確保
大手IT企業の創業者には移民や移民2世が多く、2011年以降にアメリカで創設された企業の3分の1は移民によるもの。NVIDIAのジェンスン・フアン(黃 仁勳)は台湾系アメリカ人である。
⑶オープンイノベーションの推進
アメリカでは、企業との連携も強化されており、インターンシップや共同研究を通じて、学生が実際のビジネス環境で経験を積む機会が豊富に提供される環境がある。
⑷リスクテイクを許容する文化
米国では常にリスクテイクの投資がなされる。19世紀米国の重要産業だった捕鯨産業が起源とされる「ロングテール投資」が行われる独自の文化がある。
⑸顧客中心主義
スピード感重視で顧客からのフィードバックを積極的に活用し、製品開発や改善を行う。結果的に顧客に高い価値を提供すれば良いという考え方。
⑹グローバル市場への展開
アメリカのIT企業は、世界中の市場で競争することで、更なる成長とイノベーションが促進される。
グーグル系自動運転タクシー「Waymo」が海外初上陸、日本交通・GOと協業(2024年12月17日)と報道された。実際には自動運転自体の検証は行わない。ドライバーが手動で車両を操作し、走行エリアの地図データを取得する。都内の交通状況などを把握するという。単純に日本はアメリカに10年遅れているということだ。
ひとに教えたくなるマーケティングのはなし(Vol.24)
2024年11月4日
(担当教員 唐沢龍也)
『客のいないデパートの未来』
銀座の東急プラザ(旧数寄屋橋阪急)に行った。金曜日の夕方だというのに、客はまばらである。上階のレストランフロアも美味しそうな名店揃いであるが、埋まっていない。銀座の好立地にあるのになぜ客がいないのか・・・同じような印象を渋谷の西武百貨店でも感じたことを思い出した。日曜日なのに1階の化粧品売り場以外には客がいない。ガラガラである。
都心のデパートは外国人(中国からの)旅行者が爆買いをしてくれるインバウンド需要に望みをかけて、外国人が喜びそうな品揃え(いかにも日本のような商品)やレストラン(京都の老舗など)、大きな免税コーナーなどを作った。明らかに日本人客より訪日外国人重視の戦略をとっていた。それが、2020年から3年間、新型コロナパンデミックにより大外れとなってしまった。2023年から外国人観光客は再び増加し始めたが、もはやかつての爆買いモードではなく「コト」消費が中心になっており、百貨店の思惑通りにはなっていないのが実態であろう。では、都心の一等地にありながらエアポケット化している百貨店はどうすれば良いのか?
大分など地方の百貨店は早くから地下には食料品・特産品、1階にハイブランドと化粧品、そこから上はユニクロ、ニトリなど大型の量販店をテナントとして入れている。相互にメリットのある組み合わせだと思う。しかしながら、都心はすでにユニクロやニトリも独自の店舗を展開しているため、同じことはできない。
人が集まりやすい立地を活かす。この視点で考えれば色々可能性があると思う。
例えば・・・
○ポップアップストア: 新しいブランドや商品を気軽に紹介できるポップアップストア
○イベントスペース: ファッションショー、トークイベント、音楽ライブ、将棋教室など
(写真:大阪梅田 阪急百貨店 筆者撮影)
○コワーキングスペース: 起業家向けのコワーキングスペースとして利用してもらう。
○保育園・託児所: 女性の社会進出には不可欠。
○水性栽培農場や養殖場 (最新技術で都心で野菜や魚を育てる)
駅に近く、利便性の高い好立地の資産が活かされないのは大きな損失である。
ひとに教えたくなるマーケティングのはなし(Vol.23)
2024年9月23日
(担当教員 唐沢龍也)
『サンフランシスコとシリコンバレーへの旅について』
9月1日から8日までゼミナール所属の3年生有志10名とサンフランシスコとシリコンバレーに海外フィールドスタディに出かけた。折からの円安、米国のインフレ、物価高と渡航費用の面で負担が大きかった。航空運賃や燃油サーチャージもコロナ前の2倍である。ただ、百聞は一見にしかず。現地で体験したことの価値は大きく、元はしっかり取れたと考えられる。
以下、現地で体験できたことをいくつか紹介したい。
① 移動手段の便利さ
アメリカの西海岸(ロサンゼルスしかり)、これまでクルマがないと移動できない場所であった。今や、シェアライドのUBERがスマホで簡単に呼べる。特にGoogleのWaymoという無人の自動運転タクシーは感動ものである。ジャガーのSUVがサンフランシスコの街中を走り回っている。乗ってみると不安感など微塵も感じない。快適そのもの。
② 経済格差
ホールフーズマーケットやトレーダーズジョーのような高級スーパーにはオーガニックの健康に良い商品が売られている。コカコーラなどは置いておらず、オーガニックのジュースが並んでいる。街の中心部はホームレスが多く、治安が悪化しているため店舗が撤退している。シリコンバレー(サンノゼ)のショッピングモールも訪問したが、ハイブランドの店舗が並んでいた。アジア系の住民が多いエリアで世帯平均年収が3500万円くらいあるという。物価が高くても収入も高いので、やっていける。生活の質が貧富の差で二極化している。
③ 気候と風土と人
シリコンバレー(パロアルト)滞在中、常に快晴。スタンフォード大学は構内が広すぎて、移動するのも大変であった。すでに自分のビジネスを起業している卒業生(26歳)にあったが、日本の大学生とは違うキャリア感を持っている。名門大学を出ても大企業に就職するという感覚ではないようだ。
イノベーションは失敗の連続の先にしか出ないとわかって挑戦し、その挑戦をサポートする土壌がシリコンバレーにはあると感じた。雲ひとつない青空がそういうあっけらかんとしたおおらかな風土を作るのかもしれない。
ひとに教えたくなるマーケティングのはなし(Vol.22)
2024年8月19日
(担当教員 唐沢龍也)
『還暦』について
1964年8月19日生まれである。今日で60歳になった。いわゆる還暦である。還暦の由来は、干支十干の60通りの組み合わせが60年で一巡して還ることであるとされる。還暦は、「赤ちゃんに戻る」という意味と厄年と重なるから、赤いちゃんちゃんこを着て厄払いをするのだとも言われる。
この60年を振り返ると、何の苦労もせず、ヌクヌクと生きてきたなと思う。誠実な両親のもとで大きな病になることもなく、好きなことをやらせてもらった。素晴らしき人との出会いにも恵まれた。
高校時代お世話になった北川正治先生との出会いは、早稲田大学第一文学部に進学することにつながった。大学時代は演劇サークル『劇団木霊』の先輩、同期、後輩と、入学式の日から卒業式の日まで大隈講堂裏でアングラ芝居に明け暮れた。
卒論は江戸近世文学の『洒落本論-山東京伝戯作の考察』である。日本近世文学研究の大御所の神保五彌(かずや)先生にご指導をいただいた。ほとんど授業に出席しないグータラ学生であったが、研究室には時折、顔を出してはいた。卒論提出後にパイプの煙が漂う研究室で「君は大学院に来る気はないのかね?」と言われ「広告会社に就職も決まっていますし・・・」とお断りした。このお言葉がずっと脳裏に残り、仕事で辛い時に「あの時、大学院に進学していたらなあ・・・」と思ったものだ。
1987年に旭通信社(ASATSU)に入社する。就活時の面接のエピソードは(Vol.8)「CITIZEN KANE (市民ケーン)と就職活動」に書いたので省略する。入社2年目から海外出張が1年の3分の1を占めるような20代であった。その後、組織変更に伴い海外プロモーションの部署に配属され、三菱自動車の海外案件を担当した。主に欧州全域のモーターショーの企画・運営である。
その後、フランスに合弁会社を設立する話になり、1999年から5年間、フランスに駐在する。帰国後も海外案件に携わり、シチズン時計のバーゼルワールドやミラノ・サローネのプロジェクトに関係した。
その間、仕事をしながら、早稲田大学のビジネススクールで川邊信雄先生にご指導を受けた。2011年の東日本大震災があり、翌年から明治大学大学院博士後期課程で大石芳裕先生のご指導を受ける。グローバルマーケティング研究会(グマ研)で大石先生に出会えたことが、大学教員になることにつながった。大石先生のご指導があったからこそ、今の自分がある。2017年に肺がんで亡くなった親父が病床にあった時に博士号を取得できたと報告したことはせめてもの親孝行だったと思う。まさに、人生は、点と点が繋がるConnecting Dotsである。
関東学院大学での完全定年まであと10年となった。ご恩を受けた方々に直接、ご恩返しすることはなかなか出来ないので、次世代の若者たちに最大限の貢献をしたいと思う。
時を守り、場を清め、礼を正すことをモットーとして、一所懸命に生きたい。
ひとに教えたくなるマーケティングのはなし(Vol.21)
2024年8月3日
(担当教員 唐沢龍也)
『日清食品の完全メシ』について
冷凍食品の進化は目覚ましいものがあり、電子レンジでチンするだけで美味しい食事が手間をかけずに取れる時代になった。その種類も多種多様であり、有名店のたこ焼きなども家で手軽に楽しめるようになった。今回、取り上げるのは『冷凍 完全メシ DELIおにぎり』である。実際におにぎりを食べてみたが、本当に美味しい。具材もバラエティに富んでいて興味をそそられる。1食190円と言う価格はコンビニのおにぎりとそう変わらない。「コチュジャン香るビビンバ風」や「ほぐし鮭と大葉」、「ピリ辛明太子と高菜おにぎり」など食欲をそそる。
販売は自社のオンラインサイトからの定期お届けのシステムであり、スーパーやコンビニでは販売していない。
完全メシというコンセプトは「最適化栄養食は、年齢や性別、生活習慣など、 一人ひとりの状態に合わせて主要な栄養素がバランスよく適切に調整された食です」と説明されている。カレーやうどん、パスタなどその他のメニューも用意されている。
自分自身の味覚は母親の手料理を食べて育てられたと思う。今でも美味しいと思うものは子供の頃に食べさせてもらった「味」が影響していると感じることがある。食育ということは大事だと思うが、このように冷凍食品の加工技術が進み、手頃な価格で提供されるとそちらを利用することがスタンダードになっていくのはやむを得ないし、女性が家事から解放され、他のことに時間が使えることにつながる。
日清食品といえばカップヌードルであるが、もはや、最適化栄養食のグローバル企業を目指している。チキンラーメン、カップヌードルが時短で美味しいものというところから生まれたことを考えれば、一貫性のあるブレない経営であると言えよう。
ひとに教えたくなるマーケティングのはなし(Vol.20)
2024年7月26日
(担当教員 唐沢龍也)
司馬遼太郎『空海の風景』について
まだ20代半ばの頃、一緒にお仕事をさせていただいたパリ在住の通訳だったジローさんから帰国時にいただいた本が司馬遼太郎『空海の風景』であった。なぜ、その本を別れ際にもらったのかは覚えていないのだが、折に触れて読み返すと日本を離れて仕事をする経験の大切さを教えてくれる。
頭脳明晰、神童の誉高い空海は都に出て官吏なるため大学寮で学問に励むが、やがて仏教による真理の追求を目指す。「真言」・「密教」を厳しい修行を通じて会得するために全国を放浪する。そして、遣唐使船に乗り込むため渡航費用をなんとか工面して唐に向う。平安京の宮廷から期待を一身に背負ったもう一人のエリートである最澄も同じ船団にいた。
入唐後、長安に到着した空海は、現地の文壇で書の達人としての評価を高めていく。ようやく師となる恵果和尚と対面し、密教の伝統者として認められる。空海は規則では20年とされた留学期間をわずか2年で切り上げ、帰国する。帰国していなければ894年に遣唐使は廃止され、2度と日本の地を踏めなかっただろう。
当時、世界最先端の先進国であった唐において、日本人として最高の存在感を示したスーパースターであった。空海が目指したものは大日如来を中心にした密教を体系化するという大事業であった。
ひとに教えたくなるマーケティングのはなし(Vol.19)
2024年7月18日
(担当教員 唐沢龍也)
『UberとAirbnbによるコネクティッドジャーニー』
9月1日から8日まで3年ゼミ生有志10名とサンフランシスコとシリコンバレーに海外フィールドスタディに出かける。折からの円安・ドル高とアメリカのインフレによる物価高でコロナ前の約2倍近い出費になってしまう。当初、旅行会社に航空券とホテルの手配をお願いしていたが、コスト削減も兼ねて宿泊は自分たちで手配することになった。また、キッチン付きの宿舎で合宿すれば、買い出しして料理を自分たちで作って食べればコスト削減にもなるだろう。
そこで登場するのが民泊プラットフォームのAirbnbである。以前、大学院の研究合宿で福岡に行った際に利用したが非常に快適であった。
パロアルトの邸宅をAirbnbで予約を試みた。11人の大人数が泊まれる一軒家がいくつか画面上に現れる。写真や利用者の評価などをじっくり検討する。ロケーションや付近にスーパーがあるのかなどイメージがパッと掴める。
学生にもいくつか見てもらい、総意でここにしましょうとしたところに予約をリクエストする。すると数分のうちにオーナーから承認がくる。そこで支払い情報を入力、それが承認されて予約確定となる。その後、オーナーから「宿泊者以外に外部から誰か来ますか?パーティーは予定していますか?車を持っていますか?」など質問がくる。それに回答しながら、庭でBBQはできますか?など逆質問をする。チャット状態で「庭でBBQを楽しめます」と返事がくる。至ってシンプルで個人間のやり取りであるが、スピーディである。
現地では公共交通機関とUberを使って利用する予定である。今回の目的にはシェアリングエコノミーを実体験することも含まれている。自動運転のタクシーにも乗る予定である。
コネクティッドジャーニーをうまく活用すれば、旅のスタイルがユニークなものになる。
ひとに教えたくなるマーケティングのはなし(Vol.18)
2024年6月14日
(担当教員 唐沢龍也)
『Campusノートのマーケティング』
毎月1回、明治大学で開催されるグローバルマーケティング研究会(通称グマ研)は2024年6月13日が第182回で、コクヨの清田広太郎さんの報告であった。1905年に創業され、119年の歴史があるコクヨは国の誉(ほまれ)でありたいという創業者の想いから社名を「国誉」とした総合文具・オフィス家具企業である。Campusというノートには殆どの人がお世話になった(なっている)のではないだろうか。このCampusは中高生には70%の圧倒的なシェアを持っている。美しく書くことをサポートするドット入り罫線タイプは利用している人も多いだろう。そして、小学生や大人にいかにして「生涯顧客化」していくことが課題となっており、黒い表紙の大人向けCampusなどはその一例である。ノートを中心とする文具(ステーショナリー)の海外売り上げ比率は38%であり、将来的には60%まで伸ばしていきたいということだ。なぜなら、日本の学生市場の規模はこれまで1000万人x8冊(年間)=8000万冊であったが、今後3%ずつ減少していくと推定されている。これは企業努力ではどうにもならない問題である。
重要な海外市場である中国やインドでは、現地企業を買収し販路を広げながら、優秀な生徒はコクヨのノートを使うというイメージを浸透させている。中国では模倣品(Gambol)ブランドを買収したことで一気に流通網が339%に増えた。そして、模倣品(Gambol)の数量をCampusが上回っていく。その成功要因はターゲットを厳しい受験をする女子中学生に明確に設定したことが挙げられる。SNSやイベントでコクヨのファンが増えていったという。マーケティングにおいてターゲットを絞り込むことは基本なのだ。ノートをはじめとする文具の国際マーケティングで難しいのは、国ごと、地域によって求める仕様がバラバラである点だ。罫線やサイズ(A4、B5その他)が多種多様で標準化できない。例えば、ベトナムは年間ひとりの学生が30冊はノートを使用する勉強熱心な国だが、北と南でサイズが異なる。コクヨの現地市場をモニタリングし、調査、ポップアップストア、直営店、流通拡大というステップを踏みながら、地道に日本のノートを世界に売っていくチャレンジは他の日本企業海外市場参入の手本になると考える。
ひとに教えたくなるマーケティングのはなし(Vol.17)
2024年5月30日
(担当教員 唐沢龍也)
『ユニクロ』を読んで感じたこと
杉本貴司著『ユニクロ』(日本経済新聞出版)を読んで、この本は経営史的にも貴重な資料であると思った。山口県宇部市の小郡商事が世界有数のアパレルブランドに成長する過程がわかりやすく書かれていた。柳井正さんと父親の関係、無気力な早稲田大学時代、ジャスコに入社して9ヶ月で退社、実家を継ぐも古参社員との軋轢、広島へ進出、2店舗目に飲食業を併設し大失敗など初期のエピソードが続く。
ユニクロのビジネスモデルに辿りつくまでに、ジャスコ(現イオン)で流通業の先駆者である小嶋千鶴子さん(『イオンを創った女 評伝小嶋千鶴子』)から薫陶を受けたことについて記述がある。小売業の近代化はジャスコから始まったと言える。それは「セルフサービス・ディスカウント・デパートメント・ストア」である。接客をしないで客が自由に商品を手に取る店舗という概念は米国視察で衝撃を受けたことが影響したとされる。柳井さんは小売業のチェーン店化をジャスコで体験する。ユニクロが店舗経営を重視することも、ジャスコの店長教育、店長がチェーンを支えるという点に源泉があることが理解される。職位ごとのマニュアルや社内コンテストなどたった9ヶ月のジャスコで働いた経験がユニクロでもしっかりと継承されている。
当時、やる気のない新入社員であったというが、その頃の経験がユニクロの基盤になっていることは驚きである。「働く意味さえ見出せない、何をやりたいわけでもない」という時代が柳井さんにもあったのだ。その後、ハロルド・ジェニーン著『プロフェッショナル・マネジャー』(プレジデント社)にある「現実の延長線上に目標をおいてはならない」ということをユニクロは実践して成長してきた。
今も大学生が就活を始めると突き当たる悩みは同じだ。ぜひ、この本は就活中の学生諸君に読んで欲しいと思う。
何より世界的企業の経営者になった柳井正さんにも暗く重たい青春時代があり、モラトリアムな「人間休業」時代があった。抜け出すヒントは自問自答の日々を懸命に生きることにある。
ひとに教えたくなるマーケティングのはなし(Vol.16)
2024年5月16日
(担当教員 唐沢龍也)
「プーチン5期目、訪中に思うこと:パリ〜モスクワ〜北京」
テレビのニュースで中国の習近平主席がフランスのマクロン大統領と会談し、その後、ロシアのプーチン大統領が5期目に入り、北京に習近平主席を訪問している映像を見て思い出したことがある。
1992年9月に日本企業である三菱商事が中心になってパリ〜モスクワ〜北京を自動車・オートバイで走破するラリーレイドが実現した。広告会社に就職し、有名なパリ〜ダカールラリーの仕事に関わらせてもらっていたこともあり、冠スポンサーとなったNEC(日本電気)の事務局スタッフとしてパリ〜モスクワ〜北京の1ヶ月間に及ぶ全行程を同行した。
当時、僕は入社5年目の27歳だった。
三菱商事は、フランスのラリードライバーとして有名であったルネ・メッジ氏をコース・ディレクターに招き、パリ郊外にMAPSという運営会社を設立して、フランスモータースポーツ連盟 (FFSA) 、ソビエト国家体育スポーツ委員会、中国モータースポーツ協会と競技公認や通行許可、安全確保、物資補給などについて交渉を重ね、準備を進めていた。
本来、1991年9月1日にパリのトロカデロ広場からスタートするはずであった。しかし、ソ連のゴルバチョフ書記長が軟禁される8月クーデターが発生したため、開催延期となった。3カ月後の1991年12月にはソビエト連邦が崩壊し、独立国家共同体(CIS) へと移行した。1991年頃、ロシア、ウクライナ、ベラルーシ、カザフスタンに2万7000発の核弾頭が残されていたとされる。独立国家共同体 (CIS)になったソビエトは混迷を極めており、このイベントの開催が危ぶまれたが、1年後に実現したのである。
今から思えば、パリをスタートし、モスクワを経由して、北京までを世界中から参加できる自動車レースを開催することは夢物語である。国家のエゴや分断を超えて、グローバルにつながる、共存共栄が普通の市民にとって、いかに大切なことであるかを考えさせられる。
ひとに教えたくなるマーケティングのはなし(Vol.15)
2024年5月5日
(担当教員 唐沢龍也)
『R.I.P Paul Auster :ポールオースターの死にあたって』
アメリカを代表する作家ポール・オースターが2024年4月30日に亡くなった。
ポール・オースターがニューヨークタイムズに発表した短編小説
『オーギー・レンのクリスマス・ストーリー』を映画化した作品が『Smoke(スモーク)』である。
1990年のニューヨーク、ブルックリンが舞台であり、登場人物にまつわる物語が交錯していく。
14年間毎日、同じ時間に、同じ場所で写真を撮り続ける葉巻・タバコ屋の店主オーギーを演じるのはハーヴェイ・カイテルだ。奥さんの死後、書けなくなった作家ポールをウイリアム・ハートが演じている。登場人物は皆、葉巻(シガー)やタバコがぷかぷかとよく吸う。電子たばこの時代には考えられないことだろう。一貫して流れているのは人と人がつながることが人生の意味であるということだ。
この映画の舞台、ブルックリンには大学時代の親友がレストランを手広くやっているので、2度訪れたことがある。マンハッタンから移ってきたレストラン、ブティックや画廊が立ち並ぶ、随分とあか抜けたエリアに変わっていた。
ポール・オースターも卒業生であるコロンビア大学ではイスラエルとパレスチナの紛争に関連したデモで多くの逮捕者を出している。大学生がこのように社会に向けて声を上げたのは1960年代のベトナム反戦運動以来だという。
分断と対立、ジェノサイド、戦争・・・・映画『Smoke(スモーク)』で描かれた温もりのある日常とはかけ離れた現実がある。
ひとに教えたくなるマーケティングのはなし(Vol.14)
2024年4月29日
(担当教員 唐沢龍也)
SNSで話題の投稿「#くいもんみんな小さくなってませんか日本」と値上げの伝え方
マーケティング・ミックス(4つのP)の中で企業の業績に直接的に影響を及ぼす要素であるPrice(価格)は極めて重要だ。最近、さまざまな商品やサービスが値上げされている。ある一定の利益率をコストに上乗せして価格が決定されるのは仕方ないことではあるが、消費者にとっては生活が苦しくなる。とりわけ長期にわたるデフレ経済に慣れきった日本人には厳しい。
商品を購入して「あれっ?!」と思うことがある。いわゆる価格は同じでも中身を減らす、小さくすると言う「ステルス値上げ」だ。これは、シュリンクフレーション (shrinkflation)とも呼ばれる。「貧者の値上げ」とも言われ、食品などの価格を据え置いたまま内容量だけを減らす実質的な値上げは、消費者が「前より減っていて損をした」、「騙された気がする」と感じる。
ヤマザキの「薄皮あんパン」は5個から4個になった。ここで、企業が考えなくてはならないことは「いかにして納得してもらうか」である。つまり「見方を少し変えてもらう」ことを試みるべきだろう。例えば、「薄皮あんパン」ならば「個数は1つ減らしましたが、1個当たりを増量しています」とか「食べきりサイズで新登場」などと伝えることで印象は変わるのではないか。同じような例が日清食品の「ラ王」でも見られた。「5食パックが3人に1人が多いと思っている」(3人に2人は多いと思っていないのだが・・・)として3食パックにしたのである。このようなシュリンクフレーション (shrinkflation)と取られないコミュニケーションが大切になっているのだが、気づいていない企業が意外にも多い。
(写真:日清食品ウエブサイト、https://www.rao.jp/product/より
ひとに教えたくなるマーケティングのはなし(Vol.13)
2024年4月20日
(担当教員 唐沢龍也)
マッキンゼーが説くDXのハウツー本『Rewired-デジタルとAI時代を勝ち抜く企業変革の実践書』
「DX時代を勝ち抜くにはREWIRED(ビジネスの配線をし直すこと)が必要だ!」と本の帯にある。今やデジタル・トランスフォーメーションはどの企業でもやらなければならないことだと考えられている。なぜ、やらなくてはいけないのか(Why)を理解することは大切だ。目的やゴールのイメージなき行動は無意味である。次に大切なのはどのように実践すべきか(How)ということである。これは、すでに存在している成功事例から学ぶことが最も効率的である。この本は世界有数のコンサルティングファームのマッキンゼーが200社のクライアントと10年にわたりDXを共同研究することで得た効果検証済みの方法論が示されている。
今週、この本について某グローバルIT企業の幹部の方とお話することがあった。その方はこの本の著者が来日した時に実際に会って、いくつか質問をしたと言う。
Q:DXを実践して成功している企業の経営者に共通していることは何か?
A: Tech savvy(テクノロジーに詳しい)であることだ。そうでない企業で成功した例はゼロである。
Q:DXを実践して成功している企業で開発を内製化していない企業で成功した例はあるのか?
A:自社内にエンジニアを置かず、内製化しない企業で成功した例はゼロである。
この話を聞いて、Tech savvy でない経営者、DXをそもそも内製化せず、外注している企業はDX時代を勝ち抜くことは難しいということがわかる。外注(丸投げ)して実践している気になってしまってはダメなのだ。これはDX=AIの導入についても同じことが言えるだろう。
ひとに教えたくなるマーケティングのはなし(Vol.12)
2024年4月14日
(担当教員 唐沢龍也)
『横浜関内スポーツ・エンターテインメントと地域活性化』
4月10日に関内キャンパスから徒歩数分の場所にある横浜BUNTAI(文体)でBリーグの横浜Bコルセアーズの試合が開催された。経営学部の社会連携プラットフォームであるK-bizのサポーター企業になっていただいたこともあり、観戦チケットを購入し応援に駆けつけた。
横浜Bコルセアーズはスター選手である河村勇輝の人気もあり、満員御礼状態である。会場に入場するのにも行列であった。試合は残念ながら大差で負けてしまったが、アメリカのようにバスケットボール人気が高まっていくと思われる。
横浜BUNTAIの前の通りの先には横浜スタジアムがあり、横浜ベイスターズと中日ドラゴンズの試合が開催されていた。試合終了後は横浜・関内エリアは地元の横浜Bコルセアーズと横浜ベイスターズのファンで賑わっていた。スポーツ・エンターテインメントと地域活性化は密接な関係がある。地元の飲食店など周辺のビジネスが活性化する。
大切なことはスポーツを核にして、来場した観客にどのような体験価値を地域として連携しながら提供できるかがポイントであろう。
以前から横浜は宿泊する観光客の少なさやナイトエコノミーの弱さが課題とされていた。横浜BUNTAI(文体)の横には新しいホテルもオープンしており、スポーツエンターテインメントが滞在消費する観光客の増加につながればと切に願う。
ひとに教えたくなるマーケティングのはなし(Vol.11)
2024年4月5日
(担当教員 唐沢龍也)
『新入学シーズンに思い出すこと・・・』
入学式も終わり、ガイダンスや健康診断など新学期のシーズンである。新入生は皆、初々しい。これから始まる大学生活に期待と不安でいっぱいなのがわかる。この季節になると思い出すのは、大阪から上京し、早稲田大学第一文学部に入学した1983年の4月の自分である。
初めての一人暮らし。今と違って大学は学生をほったらかしだった。科目登録なんて冊子配って以上、終わりである。説明も何もない。シラバスもなかったように思う。大学生なのだから履修要綱なんか読めばわかって当たり前ということだ。正門の前の本屋にはいくつかの出版サークルによる学部別の楽勝科目リストのような記事を載せたミニコミ誌が売られていた。同じ学部の先輩に聞くなり、兎に角、自分で情報を収集するしかない。インターネットもスマホもない牧歌的なアナログ時代のことである。
受けた授業は、ほとんど何も覚えていないのだが、演劇にかまけたグータラ学生であった僕が毎回、ちゃんと出席していたのが西江雅之先生の『文化人類学』の講義であった。大教室に立ち見が出るほどの人気で他学部、他大学のもぐり受講者も結構多くいた。西江雅之先生は政治経済学部の御所属だったと記憶している。
出席も取らず期末レポートのみといういわゆる「楽単」なのだが、語学の天才、世界中の異郷でのフィールドスタディの話は知的好奇心が掻き立てられるような内容であった。大学にはこういう知の巨人がいるのだと思った。いつも隣の席になったのは東京外大の学生だった。
西江雅之先生の著書『サルの檻、ヒトの檻』(1980)朝日出版社、『異郷』(2012)美術出版社、『新ことばの課外授業』(2012)白水社は今でも時折、読み返す本である。
ひとに教えたくなるマーケティングのはなし(Vol.10)
2024年3月24日
(担当教員 唐沢龍也)
『なぜ日本は没落するか』
英国ロンドン大学教授であった森嶋通夫先生の1999年に書かれた本『なぜ日本は没落するか』を紹介したい。残念ながら現在の私たちの状況を言い当てている。バブル崩壊後の日本から2050年の日本について警告を鳴らしている。人口減少について出生率の低下、空き家の増加、教育の荒廃などが論じられていた。また、森嶋先生は覇気のない日本人のエリート主義の欠如、職業倫理の退廃も指摘されいる。そして、それが右傾化の運動につながっていくと懸念していた。いずれも現在、私たちが直面する問題である。
確かに、職業倫理の退廃は有名企業の不祥事(データの改竄、不正会計など)、東京オリンピックの一連の贈収賄、高額報酬の闇バイトで強盗を働く若者などの形で顕在化している。政治家は裏金を作り、その使途を適当にしか説明しない。倫理という言葉が虚しく響く。
本の中で日本の没落回避には、「アジア共同体」が解決策として論じられるが、太平洋戦争時代の過去の経緯が日本とアジア諸国との関係に重くのしかかり、それを難しくするだろうという指摘もなされている。当時は日本が「アジア共同体」をリードする可能性はあったかも知れないが、もはやそのポジションに日本はなく、中国になっているといえよう。
香港の現状を考えると、中国は「アジア共同体」の良きリーダーとなるのではなく、ただ自国優先の覇権を握るために、国際ルールを無視した行動や海外直接投資によってその国を金漬けにしてコントロールするやり方が目につく。
11月のアメリカ大統領選挙は「もしトラ(もしもトランプ大統領が誕生したら)」と言われるが、そうなれば中国との関係は大きく変化することは間違いない。アメリカに輸入される中国製品に関税を100%かけるというようなことが実行されることもあり得るだろう。すでに多くの企業が生産拠点を中国からベトナムやタイ、マレーシアに移転しており、中国離れが一層進み、グローバル・サプライ・チェーンが大きく変わるだろう。
ひとに教えたくなるマーケティングのはなし(Vol.9)
2024年3月10日
(担当教員 唐沢龍也)
『LGBTQ+の課題と展望』
昨日、関東学院大学と神奈川県弁護士会の包括連携協定の締結記念シンポジウムが開催された。2023年6月23日に「LGBT理解促進法」が施行されたこともあり、重要な社会的テーマであるLGBTQ+について貴重な報告を聞くことができた。
群馬大学の高井ゆと里准教授の基調公演ではトランスジェンダーに関して、ホルモン療法や性転換手術が自由診療扱いとされ、医療費が高額となる実態や就業できず貧困に喘いでいる人が多く、自死を選ぶ人が少なくないことが報告された。人間の属性の中でなぜ、性別(男性・女性)であることがそれほど重視されるのか。結果、社会はトランスジェンダー当事者に過剰な説明を求める。就活などで当事者は延々と説明することを求められ、拒絶され、定職に就けない。
社会はLGBTQ+の権利拡大を「恐怖すべき未来」として排除していく構造を改めなくてはならない。夜のそらさんという当事者のブログ「未来人と産業廃棄物」にあるトランスジェンダー当事者が社会という期待された人間を作り出すプロセスが排除した産業廃棄物として扱われてきたという文章が紹介された。その中でトランスジェンダーはずっと存在しており、排除され、見えないように地中に埋められてきた。最近、急に現れた未来人ではないと言うことが語られている。
LGBTQ+は人権の問題である。DEI(Diversity, Equity & Inclusion)は想定されていない人たちを想定することである。社会の構造を変えていくことである。例えば、トイレの問題は社会参加そのものであり、自宅以外で排泄ができないことは、外に出てくるなと言うことと同義なのだ。建物の1階か2階にジェンダーレストイレを設置するだけでも、マイノリティーの人々を排除しないことにつながる。
LGBTQ+の未来は社会から「想定外をなくす」と言うことによって開けると思う。これは企業のマーケティングに関しても該当する重要なテーマである。
ひとに教えたくなるマーケティングのはなし(Vol.8)
2024年3月2日
(担当教員 唐沢龍也)
『CITIZEN KANE (市民ケーン)と就職活動』
今回はマーケティングの話ではないが、昨今、どんどん早期化している就職活動に関係している。
研究室に『CITIZEN KANE(市民ケーン)』の2011年9月に70周年を記念してデジタルリマスター化した際のポスターを飾っている。なぜ、この映画のポスターを飾っているのかには理由がある。
1986年の夏、広告会社を志望して就職活動をしていた。電通、博報堂をはじめ第一企画や東急エージェンシーなど受けていた。博報堂のOB訪問をした時に、Asatsuも受けた方が良いよとアドバイスをもらった。ADKの前身である旭通信社(Asatsu)の第一次面接(1対1)は人生を決定する運命的な出来事であった。面接は1時間以上に及んだ。今でいうES(エントリーシート)の趣味欄に映画・演劇鑑賞と書いていた。そこに面接官の目が止まったのだろう。「最近、何か映画観た?」と聞かれた。たまたまその前の週に観た「ビクトル・エリセ監督の『ミツバチの囁き』は良かったですね」と答えたのをきっかけに、面接官が自分の好きな『市民ケーン(Citizen Kane)』がいかにベスト・ピクチャーであるのかを話し始めた。映画の話は延々と続き、実に面白い。だが、就活の面接である。用意してきた自己PRは全くできないし、封じられたまま時間が過ぎる。
正直・・・変な面接官にあたったなあと思った。
人生とは不思議なもので、卒業後、4月に旭通信社(Asatsu)に入社する。(本命の博報堂に落ちてしまったからでもあるが・・・)そして、研修後、配属発表でその面接官が最初の上司となった。入社後に下北沢に飲みに行った時に、その面接についてご本人に聞いてみた。答えは「人の話をちゃんと聞ける人を部下にしたいと思って面接していたからな」と。「部下にするなら映画がわかる奴じゃないとつまらないしね」いうことだった。つまり、第一次面接の時にすでに配属が決まっていたのだ。
あるプロジェクトで一緒にパリに出張した時に、カタコトのフランス語でやり取りしていることをすごく褒めてくれた。「フランスにそのうち拠点もできるだろう、その時は君が行けば良い」と言ってくれた。その言葉は後に実現する。
その人は60代で癌を患って亡くなってしまったが、最高の上司であったと思う。
大学教員になって、学生には、就職で何より大事なのは良い上司に出会うことだと言っている。結局、良い会社とは尊敬できる上司のいる会社である。良い上司と出会うためには、「運」を良くするしかない。毎日を頑張って生きる、自分を磨く、好奇心を持って学習回路を開くことが「運」良くすると信じている。
自分にとって『CITIZEN KANE(市民ケーン)』はそれを思い出させる特別な映画なのだ。
ひとに教えたくなるマーケティングのはなし(Vol.7)
2024年2月25日
(担当教員 唐沢龍也)
「AI時代への期待と教育」
報道によると2月23日、米NVIDIA(エヌビディア) の株価が上昇し、時価総額が初めて2兆ドル(300兆円)を超えたとされる。NVIDIA(エヌビディア)の半導体は生成AIの利用の急速な拡大を背景に需要が急増している。時価総額が2兆ドルを超えるのはアップルとマイクロソフトに次いで3番目だ。NVIDIA(エヌビディア)は画像処理半導体(GPU)というハードだけでなく、開発用のソフトを提供し、確固なエコシステムを構築している点に強みがあるとされる。
生成AIで画像や動画コンテンツのすべてが激変する時代となった。生成AIに簡単なテキストプロンプトを入力するだけで、画像の切り抜きや編集、既存の画像と融合する新しいコンテンツが提供される。
昨年、ゼミでChat GPTを使ってさまざまな質問をしてみるというセッションを実施した。日本語でも英語でも精度の高い回答を僅か数秒で表示してくる。その上でメリットとデメリットを考えるというグループワークをした。教員の自分が一番、ハマっていたかもしれない。大学はこれからChat GPTに色々と規制をかけるのだろうか。旧態然とした大学教育の現場には未だ明確な答えはない。使ってみてそのメリットやデメリット、インプットのコツなどが理解される。頭ごなしに禁止や怖がって使用しないことの方が問題である。
パナソニックをはじめ、ビジネスの現場ではGPT-4がカスタマイズ使用されている。定型的な文章などの作成に時間の効率化がなされている。
夏休みに学生とシリコンバレーを訪問する予定だが、「期待感+危機感」を持って臨みたい。自分たちが「わかっていないことがわかる」機会にしたいと思う。
ひとに教えたくなるマーケティングのはなし(Vol.6)
2024年2月22日
(担当教員 唐沢龍也)
「小津安二郎の映画にみる結婚観」
久々に小津安二郎監督の『秋日和』のDVDを観る。佐分利信、中村伸郎ら3人のおじさん達が、学生時代の友人の七回忌の法要で集まる。友人の24歳になった娘(司葉子)の縁談を真剣にまとめようと奮闘する。娘は結婚すると未亡人の母親(原節子)が一人になるのを気遣って縁談を受け付けない。そこで、母親が再婚すれば、娘も結婚を決心するだろうと、おじさん達が母親の再婚を画策するうちに話がどんどんこじれていくという展開である。面白いのは、兎に角、適齢期(24歳)の女性に対して周囲が躍起になって結婚させようという様子が描かれている。今なら「不適切にもほどがある」ハラスメントと大炎上してしまうかも知れないような話ではある。
生涯未婚がそんなに珍しくない現代においては、適齢期を迎えた男女が結婚するのは大変なことである。フジテレビの『ノンフィクション』というドキュメンタリー番組で結婚相談所の回があったが、交際に進むまでのカウンセリングや条件交渉など相手に選ばれるための努力がひたすら求められる。
ちなみに小津安二郎監督の作品には鰻、寿司(蛤・赤貝)、ラーメンなど食事をするシーンが多い。特にお寿司屋のシーンは秀逸だと思う。原作が里見弴であるとを改めて発見した。
ひとに教えたくなるマーケティングのはなし(Vol.5)
2024年2月19日
(担当教員 唐沢龍也)
「原点回帰することの意味―カレー屋SHIVA CURRY WARA(東京世田谷)」
18時開店と同時に予約した客で満席になる有名店である。インド料理、カレーの奥深さを知ることができる。東急田園都市線 三軒茶屋駅より徒歩3分のところにある。キウイのコリアンダーサラダ、ポークスペアリブアチャーリーマサラなどメニューも独特で聞いたこともないような発見がある。カレーも定番のバターチキン、ブラックペッパーラム、季節のベジタブル、どれも絶品の旨さである。
店主の山登伸介さんは京阪神エルマガジン社から2022年に『東京・三軒茶屋 シバカリーワラのカレーとスパイス料理 』という美しいレシピ公開本を出版されている。その本の著者略歴によると「1976年生まれ、大阪府出身。20代の頃から東南アジアやインドを旅する中で現地の食文化に魅了され、独学でカレー作りを始める。思いは強まっていき、当時勤務していたアパレルメーカーを退職し食の道へ。銀座のインド料理店に勤務した後、シバカリーワラの屋号で移動販売をスタート。2013年に東京・三軒茶屋に店を構え、現在は東京随一とも言われる人気店に。お店を始めてからも定期的にインドを訪れ、本場の食文化を学び続けている」とある。
そして、明日からインドに原点回帰の旅に出るためお店は閉店し、4月8日頃に再びオープンすると言う。
ビジネス(儲け)のことを考えれば、長い期間店を閉めることはあってはならないことだろう。しかしながら、敢えて、新しい料理(=顧客体験)を革新的に創造するためには、普段と異なる時空間に身を置くようなイノベーションの旅に出ることが必要なのだろう。人は時間の経過とともに、何事もルーティン化してしまい初心(なぜ、これを始めるのか)を忘れてしまう。
カレーを食べて原点回帰することの意味を教えてもらったような気がする。
ひとに教えたくなるマーケティングのはなし(Vol.4)
2024年2月16日
(担当教員 唐沢龍也)
「企業の顧客への向き合い方―リモア編」
愛用するリモアの小型のスーツケースの車輪の部分が破損したので、銀座のリペアセンターで修理してもらった。店内は日本の円安のメリットを生かしてか、購入して帰国する外国人観光客が中心で賑わっている。1階の売り場で聞くと、修理をするリペアセンターは2階だという。15分で新しい車輪に総取り替えしてくれた。しかも、以前より静粛性が向上している。ギャランティが数日で終了するところであったのである意味タイミングが良かった。
リモアはLVMHグループの傘下に入ったことでブランド力がさらに増したような気がした。修理する部門がクライアント・ケアというネーミングであり、この企業が修理という行為をどのように考えているのかが伝わってきた。旅をする人の快適さを考え、単なるモノではなく、移動するコトの価値を自社は提供しているという姿勢を感じる。
モノ中心のグッズ・ドーミナント・ロジックの時代から顧客の体験価値や価値共創を重視するサービス・ドーミナント・ロジックの時代に変化していると言われて久しいが、マーケティングで実践している企業はそう多くはない。
ひとに教えたくなるマーケティングのはなし(Vol.3)
2024年2月7日
(担当教員 唐沢龍也)
「パーソナルサウナにハマるの巻」
横浜・関内駅前の研究オフィスから徒歩5分の場所にあるパーソナルサウナ(One Person)に時折、通っている。仕事で疲れが溜まってカラダが重たく感じる時など特に効果がある。時間はスタンダード90分、費用は5200円である。クレジットカード決済で支払いもスムーズである。この値段が高いか安いかは意見が分かれるところだろう。
2020年から始まった新型コロナ感染の対策として様々なサービスが個人化したことと「サ(サウナ)道」と言われるほどのブームに乗っかって全国に展開している。
パーソナルサウナ(One Person)は、エントランスからオシャレだ。高級なスポーツジムみたいである。さらに、サウナハットも貸してくれるし、ミネラルウオーターも1本サービスしてくれる。利用は自分一人なので、気兼ねすることなくサウナを楽しめる。何より、考え事をする(瞑想的に)ストレスをリセットするには最適の場所だと思う。
マーケティングにおける個人のニーズへの対応はこれから様々なサービス業で必要になるのではないだろうか。それを可能にするにはデジタル技術による使いやすいインターフェイス、スマート決済などの導入であろう。
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ひとに教えたくなるマーケティングのはなし(Vol.2)
2024年1月31日
(担当教員 唐沢龍也)
「クルマを売るならビッグモーター問題」
大阪茨木市の実家の近くのビッグモーターの前を通りかかった。広い綺麗なショールームには誰もいない(本当に人影なし)。整備・修理コーナーには車が数台ジャッキアップされているが、整備士の姿はない。まるでゴーストタウンのようである。
マーケティング的にはステークホルダー(顧客・従業員・サプライヤー・地域コミュニティ・自然や環境)を何とも思っていなかったことが一連の事件を引き起こす根本にあったのだと思う。非常に残念なのは経営のやり方によっては、グレーで悪いイメージのあった中古車業界を変革できたブランドになれたはずだ。ESG投資の対象としてもクルマやバイクのリユース、部品のリサイクルなどこれからのビジネスになったはずである。記者会見で醜態を晒した創業者とその後継者に業界のネガティブなイメージを変えてやろうという気概が無かった。業界の変革者の意識で中古車のビジネスをやっていたら国内のみならず新興国市場(アジアやアフリカなど)へのUsed in Japanの価値でグローバル展開もできただろう。今回の事件は経営者の意識、理念が企業にとって本当に大切なのだと教えられた。
実はこのような騒動になる前にゼミ生が面接を受けたらたった1回で内定が出たと相談に来た。CMの大量出稿で知名度はあったが、辞退すべし!とアドバイスしたことは正解であった。
ひとに教えたくなる
マーケティングのはなし(Vol.1)
2024年1月22日
(担当教員 唐沢龍也)
TSUTAYA「レンタルビデオ・DVD・CD」の閉店に想う
アメリカでブロックバスターがNetflixに淘汰されて10年くらい。TSUTAYAはよく持ち堪えてくれたとも言えるが、日本のDX(デジタルトランスフォーメーション)の遅れが顕著に現れていると捉える方が正しい。
CCC(カルターコンビニエンスクラブ)であるTSUTAYAがNetflixのようにデジタルシフトして、DMM.COMのようなオンデマンドにビジネスモデルを移行できていれば良かったのだが・・・経営者にその変化を感知する能力がなかった結果である。マーケティングは市場(技術進化)の変化の予兆を敏感に感じることがいかに大事かということだろう。「変わらないために変わる」ことが必要なのだ。
オンデマンドでは所有欲が満たされないので未だにパッケージソフトを買いたいと思う自分のような映画マニアは少数派なのかも知れないが・・・三軒茶屋店が閉店の時はDVDソフト放出大セールをやったが、関内羽衣町店はやらないようだ。三茶店で敬愛するベルナルド・ベルトルッチの作品『1900』、『ラスト タンゴ イン パリ』、『シェエルタリング スカイ』『ラスト エンペラー』などを一挙に手に入れることができたのだが。